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TPP「対米協調」に落とし穴あり オバマ政権の対中姿勢は軟化の流れ

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意が成立したが、「日米主導」の言葉に酔っている場合ではない。1985年9月の「プラザ合意」以来30年、日本は「対米協調」という名分のもとに対米追随が習い性になり、国益最優先の経済戦略が粗略になっている。(夕刊フジ)

 TPPについて、安倍晋三首相は、「米国と組んで自由や人権など価値を共有する広大な経済圏をつくる」という。メディア多数も、「開国」におびえる農業をシバキ上げ、合理化や改革を厳しく求める半面で、米自動車ビッグスリーの主力収益源であるライトトラックへの25%もの保護主義関税を30年もかけて撤廃する大幅譲歩を不問に付す。

 対中包囲網になるという評価は総論の域を出ない。TPPはあくまでも自由貿易ルールの拡大版であり、対中外交・安全保障面での波及効果は未知数だ。米国はビジネスの利益になると思えば、さっさと中国をTPPに誘い込むだろう。

 TPPは知的財産権保護や国有企業の既得権排除、相手国政府との投資紛争処理などを強化しているが、万能ではない。アップル、IBM、デル、マイクロソフト、インテルなどハイテク企業は競い合うように対中投資を増やし、先端技術を国有企業に供与している。米企業は中国市場シェア欲しさの余り、情報技術(IT)の中国標準の普及に協力している。

 中国の人民元の国際通貨基金(IMF)・特別引き出し権(SDR)への組み込みも、これまで反対してきたオバマ政権が、人民元の柔軟な変動や金融・資本の自由化を条件に賛成する態度に軟化しつつある。

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