スポーツ異聞

プロ野球の不文律を破ったばかりに… CS進出をかけたカープ戦に散った50歳・山本昌のなぜ?

広島・丸佳浩を打ち取り最終登板を終え、妻の美智子さん(左)から労われる中日・山本昌=マツダスタジアム(永田直也撮影)
広島・丸佳浩を打ち取り最終登板を終え、妻の美智子さん(左)から労われる中日・山本昌=マツダスタジアム(永田直也撮影)

 お約束というと、プロレスの代名詞のような印象すらあるが、プロ野球の世界にもさまざまな「不文律」がある。例えば、大量得点差がついた試合で盗塁やバントをしない、打席に入った投手には執拗な内角攻めをしない、本塁打の後に派手なガッツポーズをしない、相手投手の引退試合では意図的な空振り三振で引退に花を添える…。どれも暗黙の了解ゆえ、プロ野球規則に触れられていない。しかし、お約束を破ると少し厄介なことになるようだ。クライマックスシリーズ(CS)進出の懸かった広島vs中日戦にそれが垣間見えた。

重苦しさ漂う引退試合

 通常、プロ野球選手の引退試合は悲喜こもごもの要素をはらみ、ペナントレースの行方に関係のない試合に組まれることが多い。しかし、球界のレジェンド・山本昌(中日)の引退試合には「暗黙の了解」として片付けられない特別な事情があった。

 10月7日夜のセ・リーグ最終戦、広島-中日(マツダスタジアム)の先発マウンドに、史上最年長登板の50歳左腕がいたからだ。引退試合が期せずして広島のCS進出がかかる重要な一戦に組まれ、状況が一変した。

 32年間に及ぶプロ野球人生の集大成。先頭打者だけの「1人限定」は公表されていたが、ダイヤモンド周辺に重苦しさが漂っていた。3球目のスクリューボールが真ん中に入ったが、広島の丸が打ち損じたように二ゴロに倒れる。試合前、互いに「真剣勝負」を宣言していたが、丸にとってはメンタル面で打ちづらさがあったようだ。一方、打者1人を凡打で切り抜けた山本昌は広島のベテラン、新井から花束を贈られると、大粒の涙を浮かべながら降板した。

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