浪速風

司馬さんは新聞記者を「無償の功名」と言った

司馬遼太郎さんは歴史上のヒーローばかりを取り上げたわけではない。むしろ光当たらぬ存在に、鋭く、温かいまなざしを向けた。新聞記者時代に格別の思いを抱いた3人の先輩がいる。一人は編集局の片隅で寝起きし、着たきりの復員服で「記者としての大成は、俺のようになることだ」と言った老整理記者だ。

▶福井地震の取材に向かう車にうどん玉を差し入れてくれた滋賀県下の通信部記者は、冬が近づくと毎日、伊吹山を眺め、初雪の記事を送った。そして3人目は、校閲、調査など新聞製作を陰で支え、「1匹の小虫であることが人生の理想だ」と部長昇格を固辞したデスクだった。

▶「職業的な出世をのぞまず、自分の仕事に異常な情熱をかけ、しかもその功名は決してむくいられる所はない」。直木賞を受賞した「梟の城」は、新聞記者の「無償の功名主義」を忍者になぞらえた。司馬さんは「生まれ変わっても新聞記者になる」と言った。今日から新聞週間。