正論

科学の力とノーベル賞ラッシュ 動物行動学研究家、エッセイスト・竹内久美子

 ≪基礎研究の大切さの再確認を≫

 理系離れと並んでもう一つ深刻な問題は、科学の基礎研究に対する国家からの予算の少なさである。私が学び、研究した動物行動学、進化論などは、それがいったい何の役に立つのか、と問われると返答に困る分野の典型例だ。

 当然、予算案は通らず、常に資金不足。実験用具はなるべく廃品利用ということで、コーヒーやワンカップの空き瓶を利用していた。国内の学会に参加する際、交通費は出るが、宿泊費は各自の負担。海外の学会では全額自己負担ということもあった。いくら好きでも、好きをくじかれそうになることもある。

 2000年以降のノーベル賞科学部門の受賞ラッシュについては、山中伸弥氏のiPS細胞の研究発表が06年で受賞が12年と、業績の発表から受賞までがかなり短い例もあるが、たいていは20年、30年たってからの受賞である。つまりこれらの研究の多くは1970年代、80年代に行われたものだ。

 では、今後も受賞ラッシュは続くだろうか。それは国が過去10年、20年の間に科学の基礎研究のためにいかに予算を費やしたかどうかにかかっているだろう。

 ラッシュが止まらないことを願うが、少なくとも国が今すぐにでもすべきことは、科学の基礎研究の大切さの再確認と予算の増額である。

 中高生やその親御さんたちにとっては、理系を特別な領域とみなさず、本人が好きなら親はその道をとことん突き進ませるための力になってあげることだろう。(たけうち くみこ)

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