正論

科学の力とノーベル賞ラッシュ 動物行動学研究家、エッセイスト・竹内久美子

 もちろん共同研究者や他の研究者との議論なども重要であるし、そのための基礎知識が必要だ。英語の論文を読み、書く能力も求められる。しかし、それらは大学に入るための学力とは別物なのである。

 そしてこれらの能力以上に欠くことができないのは、その分野が好きでたまらないということだ。好きであればおのずと努力し、精進することになるだろう(当の本人にとっては、努力でも精進でもなく、好きの延長でしかないのだが)。

 ≪理系は難しいという思い込み≫

 大村氏が、土壌細菌を得るための土を持ち帰るため、チャックつきの小さなポリ袋を常に財布に忍ばせていること、梶田氏が幼少期に「鉄腕アトム」のアトムではなく、お茶の水博士に憧れたというエピソードからは、まさに研究は「好き」から始まり、「好き」が持続し、やがて形のあるものになっていくのだということがよくわかる。

 科学や科学の研究というと何かとんでもなく遠い世界、一部の選ばれし者たちしか踏みこめない、特別な領域と思っている方も多いと思う。

 しかしこのように、科学の研究のために必要な能力を一つ一つ検討していくならば、好きという気持ちさえあれば、どれもこれもクリアするのに、そう特別な力を必要としないことがわかってくる。

 近年、理系離れといわれているが、もしかしたら理系は難しい、理系は特別という思い込みがそうさせているのではないかと思う。何度も言うが、科学の研究に必須なのは「好き」であることであり、数学の難問が解けるとか、難しい英文法を理解し、使いこなせることではないのである。

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