伊豆大島では昭和45年、都立大島公園(動物園)で飼われていたキョン十数頭が台風で壊れた柵の間から逃げ出して野生化し、繁殖したとみられる。キョンの天敵であるオオカミやクマがいなかったことも繁殖を加速させた。
都環境局によると、平成22年度の調査では、キョンの生息数は推定3千頭。1年に1千頭ずつ捕獲していけば、5年後には根絶できると見込んでいた。だが、26年度の調査では推定1万1千頭にまで急増。約8300人の大島町の人口よりも多くなった形で、キョンの増加数に捕獲数が追いついていないという。
都の担当者は、急増の理由について「調査の精度が上がり、より正確な実態がつかめるようになってきた」と説明する。逆算すると、22年度の調査時点で、すでに生息数は6千匹に及んでいたとみられるという。
都だけにまかせておけない
この事態を受け、これまで「東京都が逃がしたのだから、東京都が責任を持って根絶すべきだ」としていた大島町も、今年度から対策に乗り出した。
大島町の統計によると、26年度の鳥獣によるアシタバなどの農産物の被害額は約581万円。うち約380万円がキョンによるものという。畑が全滅した農家もあり、町では人家や畑の周辺を中心に、わなを仕掛け捕獲している。