今をときめく歌舞伎俳優、片岡愛之助さん(43)。テレビドラマ「半沢直樹」への出演では、おねえキャラの金融庁主任検査官役で大ブームを巻き起こした。この13年間、ほぼ休みなく走り続けているという愛之助さんだが、この世界に入ったのは意外なきっかけだった。 (聞き手 亀岡典子)
--歌舞伎は家柄や門閥がものを言う世界です。でも愛之助さんは歌舞伎の家の生まれではないですよね
愛之助 大阪の堺で、祖父は船のプロペラを作っている会社を興し、父が継ぎました。歌舞伎とは関係ない家です。
--ではなぜ、歌舞伎界へ
愛之助 家と工場が同じ敷地内にあってダンプカーの出入りが激しかった。危ないので、幼い頃、僕は妹と家の中でばかり遊んでいたそうです。心配した父が、子供同士の触れ合いのためにと、松竹芸能のタレント養成所に行かせることにしたみたいで、オーディションにたまたま受かりました。
--きっと、かわいかったんでしょう
愛之助 いやいや。でもオーディションに落ちていたら、今の僕はなかった。僕の1つ目の人生の分岐点でした。
--それで歌舞伎の舞台に子役で出るようになった
愛之助 一番初めは、藤山直美さん主演の昭和54(1979)年のNHK銀河テレビ小説「欲しがりません勝つまでは」。その後に歌舞伎の子役をいただきました。まだ見たこともなくて、歌舞伎って何だろうっていう感じでしたが。昭和55年、大阪・中座の「関西で歌舞伎を育てる会(関西・歌舞伎を愛する会)」の第2回公演で、「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」の丁稚(でっち)三太でした。
--そのときはまだ芸名はなく本名の「山元寛之」での出演だったそうですね