理研CDBが語る

遺伝子と環境の連携が生み出す細胞の運命

【理研CDBが語る】遺伝子と環境の連携が生み出す細胞の運命
【理研CDBが語る】遺伝子と環境の連携が生み出す細胞の運命
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 人生には、何度か進路の選択を迫られるときがある。あるいは振り返ってみて、あそこが一つのターニングポイントだったと気づくこともあるだろう。

 実は細胞も同じだ。例えば私たちの脳の表面を覆い、日常の行動や感覚、言語などをつかさどる「大脳皮質」。始まりはごくごく少数の細胞が、幾度も分裂をしながら、さまざまな進路選択を迫られ、別々の運命をたどった個性豊かな細胞を生み出す。ヒトでは160億個もの多様な神経細胞が整然と並び、個々の細胞が時には数千個の細胞とケーブルで接続して極めて複雑なネットワークをつくる。

 大脳皮質の構築原理をひもとくのは難しそうだが、いくつかのルールが見つかっている。

 1つめは、タイムスケジュールを守ること。大脳皮質の発生プログラムが始まるとタイマーが作動し、次々に生み出される細胞に時期によって異なる運命が振り分けられていくのだ。

 2つめは、後から生まれてきた細胞は、先に生まれた細胞を追い越して、より外側へと移動しなければならないこと。同じ時期に生まれた同種の神経細胞は一つの層をつくり、その外側に順々に新たな層が積み重なっていく。最終的にバウムクーヘンのようにぎっしりと敷き詰められた6層の大脳皮質になる。これにより、頭蓋骨の限られた空間に膨大な数の神経細胞を収納することができるのだ。

 これらのルールを支配するものは一体何なのか?遺伝子を操作して、いったん進み始めたタイマーをリセットしてみると、大脳皮質の細胞は律義にもう一度最初から神経細胞の運命を振り分け直すのだ。

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