プロ野球巨人の福田聡志投手が野球賭博に関与していたと球団が発表した。賭博の対象には巨人戦も含まれていた。
なんと愚かな行為だろう。球界はファンの信頼を大きく損なった。2020年東京五輪の準備で失態続きのスポーツ界全体へも悪影響は避けられない。危機感は球界、スポーツ界全体で共有すべきだが、とりわけ巨人の責任は大きい。
野球協約の177条は選手らに「所属球団が直接関与する試合の賭けをすること」などの不正行為があった場合、コミッショナーが永久失格処分とすることを定めている。福田投手も協約を熟知していたはずであり、愚行の責任を負うべきは当然である。
球界には、昭和44年に発覚した「黒い霧事件」で多くの中心選手を失った重く暗い記憶がある。この反省から暴力団排除運動に積極的に取り組み、賭博行為を遠ざけてきたはずだ。新国立競技場の建設費などに充てるためスポーツ振興くじ(toto)の対象をプロ野球に拡大する案にも、選手会を中心に強く反対してきた。
現役選手の賭博関与は、そうした努力をすべて無にする。
巨人の姿勢にも疑問がある。賭博関与の発表は、巨人がシーズンの日程を終えた翌日だった。しかも原辰徳監督がオーナーらに今季の報告を済ませ、クライマックスシリーズ(CS)の抱負を語った1時間後である。他球団は日程を残しており、セ・リーグはCS進出球団も決まっていない段階だ。自軍の都合を優先させた発表と勘ぐられても仕方あるまい。
巨人の選手に、反社会勢力や賭博常習者につけ込まれる素地はなかったか。例えば原監督は平成24年、自身のスキャンダルを隠すため、野球関係者を名乗る男性らの要求に従い現金1億円を渡していたことが明らかになった。
不当要求や恐喝に応じることは反社会勢力への利益供与につながるが、球団は監督が被害者であることを強調し、そのまま監督を続行させた。こうした対応が選手らに、不祥事への感度を鈍らせた可能性はなかったか。
再発防止には厳正な処分が欠かせない。野球賭博や八百長問題に揺れた大相撲は場所中止の荒療治を経て、今日の人気回復に結びつけた。巨人はこの問題をどう受け止めるか。球界の盟主らしい行動をみせてほしい。