主張

2邦人逮捕 中国は容疑の詳細を示せ

 中国当局が、国内でスパイ活動を行った疑いがあるとして日本人男性2人を逮捕した。身柄の拘束は今年5月から長期にわたる。だが、容疑の詳細が明らかにされないのは、どうしたことか。

 中国の洪磊報道官は2人の逮捕を認め、「法に基づき調査し処理する」と述べたが、その詳細については言及を避けている。逮捕容疑を具体的に開示すべきだ。

 2人の拘束に適用したとみられる「反スパイ法」は昨年11月に施行された新法で、スパイ活動の定義は「国家安全に危害を加える活動」とされた。治安当局が幅広く定義を解釈できることから、恣意(しい)的な運用が危惧されていた。

 さらに刑法のスパイ罪で逮捕、起訴されれば、特別規定で死刑の適用もあり得る。

 中国は7月、人権派弁護士や活動家らを対象に過去最大規模の摘発を行い、100人以上を連行、拘束して国際社会の非難を浴びたばかりだ。

 2010年に尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で中国人船長を逮捕した際には、対抗措置のように中国国内で日本企業の社員ら4人がスパイ行為を疑われ、身柄を拘束された。処分保留による船長釈放の判断には、社員らへの配慮もあったとされる。

 習近平政権はしきりに「法に基づく統治」を唱える一方で、「法治」は党の指導下にあるとも強調している。

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