安全保障関連法が9月19日、参院本会議で可決、成立した。テレビ各局は成立までの連日、与野党の激しい国会攻防や法案の論点を報じたが、一部の番組は法案批判に大半の時間を費やし、反対を色濃くにじませた。テレビ局は一連の審議をどう伝えたのか。(三品貴志)
「公平、公正のバランス感覚を大事にしてきた。世論も分かれたので、レギュラーコメンテーターのほかに多様なゲストを呼び、いろいろな意見を多角的に紹介してきた」。テレビ朝日の吉田慎一社長は9月29日の記者会見で、安保報道について、そう強調した。
16日の「報道ステーション」にはレギュラーの北海道大の中島岳志准教授に加え、ゲストとして日本総合研究所の寺島実郎理事長が出演した。しかし、中島氏は「私たちは今、大きな崩壊に出合っている」、寺島氏は「国民から支持を得られていない」などと述べ、ともに与党の対応を疑問視。同日の番組では反対集会の様子も詳しく報じられたが、賛成派の意見はほとんど紹介されなかった。
法案が参院平和安全法制特別委員会で採決された17日の放送では、古舘(ふるたち)伊知郎キャスターが「私はやっぱり強行採決だと思う」と主張。番組がこの週、有識者や「街の声」など複数の賛成意見を紹介したのは、法案成立直前の18日夜になってからだった。