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拡大する在宅医療 事前の情報共有を
総務省によると、平成25年の救急搬送は534万人で過去最多を更新した。過去10年で、小児や成人の搬送はやや減ったが、高齢者は1.5倍に増えた。
消防法では、重症者と軽症者を適した搬送先に振り分けられるよう、地域のルールを決めることを求めている。地域ごとに二次救急や三次救急、医療機関ごとの専門分野などを記したリストを作成。消防機関が、患者の状況に応じて搬送先を選ぶルールも決まっている。
だが、比較的軽度の患者を受け入れる「二次救急」の医療機関は過去10年増えていない。体制に差もあり、なかには年間受け入れ数がゼロという医療機関もある。対応力の底上げが必須の課題となっている。
一方で、在宅医療は広がり、自宅で療養する患者が増えている。患者のSOSに24時間365日対応する「在宅療養支援診療所」も増えているが、その質には差がある。「患者から深夜に連絡を受けて、『救急車で病院に行ってください』という医師もいる」(都内の開業医)との声も聞かれる。
横浜市のある訪問看護師は「困るのは発熱時など。医師が対応できないと、冷やすしか手段がない。病院に行くために自家用車や介護タクシーでなく、救急車を呼んでしまう家族や看護師もいると思う。高齢者の発熱は当然予測される。事前に頓服の解熱剤を処方してもらうこともある」と、瀬戸際のやりくりで救急搬送を避ける。
ゆるやかに看取りに向かうなかでも、病院を頼ることはもちろんある。この訪問看護師は「すべて家で看取れるわけではないし、在宅患者の入退院は当然ある。在宅医療を始めるときに、どんな状態のときに、どこに、どう運ぶか、医療職と介護職が家族を交えて、事前に情報共有をしておくことが必要。特に、在宅患者の受け皿になることが多い病院は、情報共有に加わってほしい」と話している。