同センターが、東京消防庁の要請に対して、患者を受け入れた「収容率」は平成24年に65%。浜辺部長は「理想は、要請を100%受けること。だが今は、救うべき命を救うために依頼を選別しようという心持ちになっている」と言う。
受けられないのは、ベッドに空きがなかったり、他の患者を処置中だったりするからだが、センターが「適応外」と判断したケースもある。その最多は「軽症など」で45%。「寝たきり」(19%)「がんなど慢性疾患の末期」(11%)「老人ホームからの搬送」(10%)-などが続いた。自宅で在宅医に診てもらっているが、夜間に連絡がつかず、救急搬送されるケースや、高齢者施設などが看取り寸前に送ってくる「看取り搬送」もある。
患者家族には、他に選択肢がない苦悩がある。だが、問題は、そうした患者を受け入れていると、本来受けるべき患者を受けられなくなることだ。同センターで救急患者を受け入れる「初療室」は3室。患者が搬送中に心肺停止すれば、心臓マッサージをしながら運び込み、電気ショックで蘇生を試みながら、10人超のスタッフが高度で濃厚な医療を集中投下できるように整備された部屋だ。
その初療室がふさがれば、救急隊は4人目を別の医療機関に運ぶことになる。だが、浜辺部長は「4人目が、交通事故の若い患者だということはある。近隣で起きた事故の患者を別のセンターへ運べば、治療開始に時間がかかる。3分や5分で治療を始めれば助かるが、10分かかったら助からないということはあり得る」と指摘する。