家族 第5部 記憶色あせても(6)完

できることが笑顔つくる 闘わない 一緒に生きていく

 苦労だとも感じていない。理由は簡単だ。「連れ添った奥さんじゃないですか。最後まで見るのが人としての生き方でしょ」

 1年前、結婚40周年を迎えた。美幸の症状は初期のまま進行していない。「あと10年、このままで金婚式を迎えようね」。俊夫の言葉に美幸が「うん」とうなずいた。目下の目標は互いの健康を保つことだ。

 病気になってできなくなったことはあるが、得たものはもっとある。「病気にならなければ、町内会の一おばちゃんで終わっていたのが、彼女には今、100人以上の友達がいる」。人見知りな性格も「変わった」という。昔の美幸だったら恥ずかしがったであろう、認知症問題普及のためのビラ配りにもついてくるようになった。

 「今の生活は楽しいよ。この人の笑顔が見れるもん」。葛藤を乗り越え、病気を受け入れ、闘わない生き方を知った2人の間に、再び穏やかな時間が流れ始めた。(敬称略)

=おわり

 連載「家族 第5部」は伊藤弘一郎、滝口亜希が担当しました。