家族 第5部 記憶色あせても(6)完

できることが笑顔つくる 闘わない 一緒に生きていく

■3つの約束

 俊夫は美幸の退職直後に同居を始めた三女と、怒らない▽逆らわない▽15分以上、1人にさせない-という3つの約束を決めた。町内会の各戸にも妻の病気を説明し、協力を求めた。現在は定年退職を迎えた俊夫がほぼ終日、美幸とともに過ごしている。

 俊夫が心がけているのは、毎日外へ出掛けること。デイサービスのほか、市が認知症患者や家族向けに開く「れもんカフェ」や創作教室など、カレンダーには12月まで予定がびっしりと書き込まれている。美幸もこうした交流が刺激になっているようだ。

 俊夫には、ある男性患者に教えられたことがある。「認知症という病気は闘ってもいいことはない。一緒に生きていくんだ」。はっとさせられた。

 美幸の機嫌を損ねそうなことがあれば、別の話題にして注意をそらす。10分で着く場所でも、1時間前に美幸が「出掛けよう」と言えば、回り道をしながらゆっくり向かう。美幸の好きなドラマや歌番組をとりため、入浴も寝るときも一緒だ。「やっぱり、彼女のことが好きやから。いま彼女が何を望んでいるか、それだけを考えて生きている」