家族 第5部 記憶色あせても(6)完

できることが笑顔つくる 闘わない 一緒に生きていく

デイサービスで他の利用者の昼食を作る中西美幸さん(左)。女性職員のアドバイスを受けながら調理や盛りつけをする=京都府宇治市の「メイプルリーフ名木」(滝口亜希撮影)
デイサービスで他の利用者の昼食を作る中西美幸さん(左)。女性職員のアドバイスを受けながら調理や盛りつけをする=京都府宇治市の「メイプルリーフ名木」(滝口亜希撮影)

 アジフライを揚げる香ばしい匂いがデイサービスの台所から広がる。女性スタッフの横で油揚げを刻む中西美幸(62)の包丁さばきは手慣れたものだ。「中西さん、お揚げをお鍋の中に入れましょか」「次はおみそ溶かしてください」。指示に従い、手際よく作業をこなしていく。

 平成26年9月から週2回通う京都府宇治市のデイサービスで、美幸は昼食作りを手伝っている。認知症対応型のこの施設では、利用者の中心は80、90代で、美幸は一番の若手。「まだ若いし、できることもたくさんあるから調理に参加させてください」と夫の俊夫(63)が施設に頼んだ。

 施設から帰宅した美幸はいつも笑顔だ。時々、何を作ったか忘れているが、施設からの連絡帳を見た俊夫が「今日は焼き魚食べたの?」と聞くと、「そや、そや」とうれしそうに答える。俊夫にとってはそれが何よりの喜びだ。

 家での家事は同居する三女(33)に任せきりだが、生き生きと施設の台所に立つ美幸は、認知症と診断される前の料理上手だった妻の姿そのままだ。

 「仕事を与えられることで社会の役に立っている、存在意義を認めてもらっているという気持ちになれるんです」。できることがあるという達成感は、確かに妻の笑顔を増やした。