石野伸子の読み直し浪花女

青春の開高健(6)新聞もとに副業執筆、1年後に芥川賞…早業29歳の「闇」

 その開高に死が訪れたのは58歳。晩年に傾斜していた宝石の世界を織り込んだ「珠玉」を発表するなどまだまだ現役の作家として執筆を続ける中での突然の死。食道がんで手術をし半年後の死去だった。

 開高健はよほど魅力的な人物だったか、あるいは突然の死があまりに無念だったか、没後にその人となりを語る本が次々と出版された。

 すでに紹介してきた谷沢永一による「回想開高健」(1992年)や、向井敏による「開高健青春の闇」(1992年)などがその皮切りで、その後もアマゾン紀行にも同行した編集者、菊谷匡祐氏による「開高健のいる風景」(2002年集英社)、私設秘書の役割も果たしていた編集者、細川布久子さんの「わたしの開高健」(2011年創美社)など、身近にいた編集者らが「もう話してもいいでしょう」(『わたしの開高健』)と記した打ち明け話を次々と登場させている。

 そんな中で、目を引くのが牧羊子に関する記述だ。牧羊子は悪妻だったとする説が散見する。もっとも強烈に牧羊子悪妻説を展開しているのは谷沢永一だ。  =続く

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