論壇時評

10月号 恋愛という文化の終焉 早稲田大学教授・石原千秋

 長い間不思議にも思わなかったある表が、最近奇妙なものに見えてきた。「見合い結婚と恋愛結婚割合の推移」(湯沢雍彦『図説 家族問題の現在』NHKブックス)である。1940年代に65%程度あった見合い結婚が60年代後半に恋愛結婚とクロスし、以後恋愛結婚が増加。90年代には80%を超える。奇妙なのは「見合い結婚」は形態なのに「恋愛結婚」はいわば動機だという点にある。たしかに、一昔前ならば「見合いか恋愛か」という問いはあり得たが、現在では「恋愛」の項目に「経済的理由」とか「単に一緒にいたいから」とか「仕事のパートナーだから」とかさまざまな動機が入り得るだろう。そしてそれならば子供はいらず、婚姻届を出す必要も感じなくなるのはごく自然な趨勢(すうせい)だ。

 独身者の約4割が恋愛の必要を感じていないという最近の調査結果も、何ら不思議なことではない。この調査に驚いて、「傷つきたくないからだ」とか「経済的に自立できない層が増えたからだ」とか、さまざまな理由をひねり出す文化人もいる。日々大学生と接していると、もっともな理由だとは思う。

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