あめりかノート

現実味ない「巻き込まれ論」 古森義久

 集団的自衛権という言葉から国際的にまず連想されるのは、北大西洋条約機構(NATO)だろう。

 東西冷戦の長い年月、北米と西欧の諸国が「一国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなして共同で反撃する」という集団自衛を誓約した多国間同盟である。集団的自衛権の行使可能な態勢でソ連の強大な軍事脅威をみごとに抑止し、東西両陣営間の平和を保った。

 米国のブッシュ前政権時代、そのNATOに国防総省首席代表として駐在したブルース・ワインロッド元国防次官補代理に日米の集団的自衛権について問うてみた。日本の安全保障関連法に対し「日本は自国の安全に関係のない米国の戦争に巻き込まれる」という日本側の一部の主張への考察だった。

 「たとえ米国独自の戦争や紛争への他国の支援が必要な場合でも米国の軍事能力は全世界的であり、その対象地域を主眼に米軍主体の態勢を組むため、その地域に直接関わりのない国の軍事支援を求める必要がありません。例えばバルカン半島の紛争に日本の軍事支援を要請する理由がないのです」

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