日曜経済講座

人民元のSDR通貨認定ヤマ場に 瀬戸際の中国金融にワシントンの二重基準 編集委員・田村秀男

 習近平中国共産党総書記・国家主席は今回の訪米を通じて、人民元の国際通貨認定にすさまじい執念を見せた。国際金融の総本山、国際通貨基金(IMF)に元を国際通貨として認定させ、自前でふんだんに刷れる元を世界のどこでも使えるようにする道を付け、党指令の経済体制の延命を図る。IMFで拒否権を持つ米国の出方が鍵になるが、習主席は実利をちらつかせて、ワシントンを篭絡(ろうらく)する戦術を展開している。

 元が国際通貨になるためには、ドル、ユーロ、円、ポンドと同様、IMFの仮想合成通貨、特別引き出し権(SDR)に組み込まれる必要がある。最終的にはワシントンの政治判断次第だ。

 エピソードを紹介しよう。

 2001年1月に発足したブッシュ共和党政権はクリントン前民主党政権の露骨なばかりの親中国路線を撤回し、発足当時は強硬姿勢をあらわにしたが、中国市場重視の米産業界やウォール街から修正を求める声が出る。

 そこで北京に飛んだのはオニール財務長官(当時)で、「9・11」同時中枢テロの前日、10日にオニール氏は人民大会堂で江沢民国家主席(同)らと会談。ドルに固定している人民元制度の改革を求めるオニール氏に対し、中国側は「いずれ変動させるとしても、幅はちょっとだけで」と。オニール氏は「しょせん中国はまだ統制経済だ。市場資本主義の力に任せると中国は分裂してしまう」と内心思った。

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