谷崎由依のオススメ 月間MVC

美しい風景の裏にある虐殺の歴史 「光のノスタルジア」「真珠のボタン」

 エピソードがエピソードを呼ぶように、ゆるやかに、静かに、紡がれる。それは告発者の静けさだ。インディオたちのモノクロームの表情。黙って向けられるまなざし。また政治犯とされたひとびとが、収容所のあったドーソン島をいっせいに指差すカットは、まるでアンゲロプロスのひとこまのようだ。スクリーンのこちら側へ向けられる、瞳、瞳、また瞳。

 すべてが事実だ。それも衝撃的なものばかり。けれど映像は声高ではない。むしろ詩のように、そこにある。けれども詩とは、美しいだけのものではない。重く、と同時に浮遊するような、ここにあるものに意味を見るのは、わたしたちの仕事だと思う。

 =おわり

 南米ドキュメンタリーの巨匠、パトリシオ・グスマン監督がチリを舞台に、圧倒的な映像美で混迷する文明社会に問う記録映画2作。「光のノスタルジア」は天文観測点であり、独裁政権下で捕らわれた人々の遺骨が埋まるアタカマ砂漠を取材した作。また「真珠のボタン」は、西パタゴニアの海底で発見されたボタンを基に、パタゴニアの歴史をひもとく。今冬、大阪市淀川区の第七藝術劇場で公開。

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