高齢者もベンチャーの時代 生きがい、労働力不足補う

 「cocoloito(こころいと)」と名付けたプロジェクト。働き手を育成するため、3月から団地の集会所で月1回の編み物教室を開いている。手芸用品や素材などは8団体・企業の協力で用意した。

 教室に参加した松岡節子さん(77)は「昔は子供の洋服はみんな自分で編んでいたから手が覚えている」。今村加代子さん(64)は「作ったことのない形やデザインも教えてもらえるのが楽しい」と笑顔をみせた。

NPOで本格活動へ

 参考にしたのはフランスの通販サイト。若者向けのニット商品と編み手の高齢者らのプロフィルを紹介しており、顧客は好きな商品と編み手を選べる。完成した商品を顧客の若者が高齢者の自宅に取りに行き、泊まることもあるという。世代間の交流も促す事業だ。

 こころいとプロジェクトは、商品デザインには大阪芸術大の学生が関わり、手工芸品のネット通販を手がけるクリーマ(東京)と連携。11月の受注・販売開始を目指している。

 大阪市内で縫製品の企画などを行い、プロジェクトに参画する桝谷武志さん(52)は「高齢者の生きがいや健康につながるように、体力や意欲に合わせ、徐々に仕組みをつくりたい」と語る。事業を本格化するため、来年春には協力企業の経営者らが個人で参加するNPO法人を設立する予定だ。

 東京農業大の木村俊昭教授(地域ビジネス論)は白鷺団地での取り組みについて「高齢者が主体的に顧客動向などの情報交換や役割分担を行い、高齢者自身に利益が還元されることが必要。地域全体に動きが広がるとおもしろい」と話す。

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