高齢者もベンチャーの時代 生きがい、労働力不足補う

編み物教室でマフラーの製作に取り組む高齢者=堺市東区の白鷺団地
編み物教室でマフラーの製作に取り組む高齢者=堺市東区の白鷺団地

 少子高齢化で働き手が少なくなる中、高齢者による事業が注目を集めている。ベテランの知恵を生かした仕事が評価され、成功例も出てきた。現役を引退した人たちに生きがいをもたらすだけでなく、将来の労働力不足を一部補う可能性もある。堺市では、ニット製品を受注生産する高齢者ベンチャーの設立準備が進んでいる。(牛島要平)

 里山に入って季節の木の葉や花、山菜などを集め、日本料理店に出荷する-。徳島県上勝(かみかつ)町で成功した高齢者によるビジネスだ。愛知県豊田市の民俗資料館「三州足助(あすけ)屋敷」では、山里に伝わる機織りや傘張りなどの実演を高齢者が行っている。

 いずれも高齢者に生きがいと収入をもたらす取り組み。働く人が減って地域経済が衰退していくのを防ぐ効果も期待されている。

 総務省統計局などによると国内の生産年齢(15歳以上65歳未満)人口は平成7年の8726万人をピークに減少し、26年10月現在で7785万人。少子化と団塊世代の引退が要因で、過疎地に限らず高齢者の労働力を生かすことが課題となっている。

仕事で笑顔に

 「施しを受けるのは嫌」

 「だれかのために何かすれば元気になれる」

 大阪府立大の奥田浩之客員准教授(48)らが4年前に堺市東区の白鷺(しらさぎ)団地での調査で集めた高齢者の声だ。昭和38年完成の同団地には現在千人以上が暮らすが、高齢化が進み今後の生活への不安が増していたという。

 だが、奥田准教授と学生らがニット製品を受注販売する高齢者ベンチャーの設立に向けて動き出すと様子が変わり始めた。

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