名品の来歴

実は中国製だった奈良土産のレジェンド「ビニール鹿」…子供らに愛されて半世紀以上

【名品の来歴】実は中国製だった奈良土産のレジェンド「ビニール鹿」…子供らに愛されて半世紀以上
【名品の来歴】実は中国製だった奈良土産のレジェンド「ビニール鹿」…子供らに愛されて半世紀以上
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 奈良市の興福寺境内の南西側にある猿沢商店街。春日大社への参道にも通じる三条通りに面した商店街で、シーズンを通じて観光客でにぎわいをみせる。

 この商店街の一角にある土産物店「ふじや」の軒先につるされた色鮮やかな愛らしい玩具を見つけた幼児が、「あれあれ」と指をさしながら母親の手を引いて近づいてくる。お目当ては、奈良土産のレジェンドと呼ぶにふさわしい「奈良のビニール鹿」だ。

 「これほしい」と幼児がねだると、「お母さんも子供のころ、こうてもうたわ」と母親がひとしきり感慨にふける。「ふじや」の店先では決まってこんな光景が展開されるという。

 奈良のあちこちの土産物店にビニール鹿を卸しているのが、同市法蓮町の観光土産品製造卸業「杉森物産」。「アナログで時代遅れかもしれませんが、紛れもないうちの看板商品です」と杉森憲二社長(66)が目を細める。

 杉森社長によると、ビニール鹿は、大阪府池田市の業者が商品開発し製造。業者の廃業に伴い一時期、台湾で作られたが現在は中国製という。もともとは、奈良市内の商店が土産物として販売していたが、この商店が和菓子をメーンに扱うことになり、杉森物産が卸元となった。

 ビニール鹿がいつ誕生したかは不詳だが、大和路を愛した写真家、入江泰吉が昭和30年に撮影した1枚の写真が手がかりになりそうだ。東大寺の大仏殿中門辺りにレンズを向けた写真には、境内の売店でビニール鹿が売られている様子も写っている。「60年以上は愛されているロングセラーですな」と杉森社長。

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