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机を挟んで向かい合った女性上司の言葉を、信じられない気持ちで聞いていた。「妊婦は不妊の人を不快にするから、辞めてください」。同性である女性の発言とは思えなかった。2人を決定的に隔てているのは結婚、妊娠という経験の差。次々に繰り出される暴言の矢を受けながら、そのあからさまな悪意に「嫉妬」の影を見た気がした。
「妊娠したなら辞めてもらいます」
横浜市の主婦、前村早紀(31)=仮名=は平成25年、結婚4年目で待望の第1子を妊娠した。当時、派遣社員として働いていた自動車販売店は男性ばかりの職場だったが、「出産直前まで仕事を続けたい」との意思を応援してくれた。
ところが数日後、販売店を訪ねてきた派遣元の人材派遣会社の女性上司は開口一番、「妊娠したなら辞めてもらいます」と、契約打ち切りを突きつけた。
上司は40代の独身キャリアウーマンで、これまで何人もの派遣社員のコーディネートを担当したベテラン。産休や育休制度について尋ねるつもりだったが、とてもそんな雰囲気ではない。慌てて仕事を続けたいと訴えると、「妊婦って自分のことしか考えないヒステリックな人ばかりで、話にならない」と顔をしかめ、「妊婦は見てくれが悪いし、お客さんの中に不妊の人がいたら不快に思う」と、再度辞職を促された。