浪速風

今年の秋は楽しめない

「秋の日の/ヴィオロンの/ためいきの/身にしみて/ひたぶるに/うら悲し」。フランスの詩人、ポール・ベルレーヌの「秋の歌=落葉」は上田敏の翻訳で親しまれてきた。去りゆく夏と厳しい冬に挟まれた秋が一抹の感傷をもたらすのは、この名訳の影響が大きいだろう。

▶ベルレーヌが暮らした北フランスの秋は陰鬱な季節という。バイオリンの音にことよせた秋風は、木の葉を散り落とす邪悪な神の息吹とされる。対して日本では豊かな実りの季節でもある。澄んだ秋空や紅葉の色彩、虫の声などを五感で楽しむ。「○○の秋」も数多い。日本人は秋が好きなのである。

▶だが今年は…。関東・東北地方を襲った記録的な豪雨で街が水没した。阿蘇山が噴火して、猛々しく噴煙を上げる。相次ぐ自然の猛威に、秋を楽しむどころではない。国会は安全保障関連法案の参院での採決が迫り、与野党の攻防が緊迫した局面を迎えている。秋のイメージが変わりそうだ。