「人が倒れてるから来てほしい」。今年2月6日早朝、伊丹駐屯地(兵庫県伊丹市)に出勤しようとしていた白井博己陸士長(24)は、同じアパートに住む男性から呼ばれた。見ると、中年のスーツ姿の男性が近くの田んぼに頭を突っ込むように倒れていた。博己陸士長は、真冬で体が冷えていることを想定し、自宅にいた妻の百恵陸士長(27)に布団を持ってくるように指示し、男性に駆け寄った。
「大丈夫ですか」。博己陸士長は声をかけたが男性の反応はなかった。通行人らとともに路上に引き上げると男性はかすかにうめき声をあげた。駆けつけた百恵陸士長が持ってきた布団を男性にかけ、救急車が到着するまで2人で声をかけ続けるなど適切な処置をした。その後、男性は病院に搬送され、命を取り留めたという。
「人のために何かしたい」と入隊した2人は伊丹駐屯地で出会い結婚した。博己陸士長は現在、3等陸曹になるため、大津駐屯地(大津市)で教育訓練を受けている。衛生隊員の百恵陸士長は、昨年10月に男児を出産し、育児休職中だ。
2人とも人命救助の訓練を受けていたが、実際に救助の現場に立ち会ったのは初めてだったという。博己陸士長は「頭が真っ白になったが、日頃の訓練を思い出して、落ち着いて対応できた」と振り返る。百恵陸士長は「行動にもっと自信がもてるよう、訓練を積み重ねていきたい」と気を引き締めた。