尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化から11日で丸3年となる。周辺海域では鹿児島や宮崎の漁船も操業しているが、毎日のように中国船が押し寄せる。さらに、中国・台湾の連携にくさびを打ち込もうと結んだ取り決めによって、台湾漁船も数多く現れるようになり、九州の漁業者は、漁場変更を余儀なくされる。中には廃業する漁師もいた。(奥原慎平)
平成26年。指宿漁協(鹿児島県指宿市)の組合長、川畑三郎氏(67)は一升瓶を手に、沖縄・先島諸島の漁協を巡った。先島諸島の与那国島周辺に、漁場を変更するあいさつ回りだった。
指宿漁協の遠洋漁業船団は、先島諸島の北側、尖閣周辺海域を漁場としてきた。昭和50年代以降、毎年11月から翌年6月にかけて操業し、ハマダイなどを獲ってきた。黒潮がエサとなるプランクトンを運び、ハマダイのほか、ハタ科のスジアラなど高級魚が集まるよい漁場だった。クロマグロの産卵場としても知られる。
ところが、状況が一変する。24年9月の尖閣諸島国有化以降、中国の公船やサンゴ漁船が、この海域に押し寄せるようになったのだ。
身の危険を感じることもあった。25年2月頃、指宿の遠洋漁業船団が漁をしていると、1千トンクラスの中国公船が船首を向けてきた。威嚇行動だった。指宿の漁船は20トン程度しかない。
夜間停泊中に、近くを通った中国漁船が流す「はえ縄」に、イカリのロープが引っかかり、切断されたこともある。
船団に所属するある船の平均水揚げ高は4千万円程度あったが、こうした妨害行為もあって、25年度は15%減の3400万円に落ち込んだ。
国有化前には8隻あった遠洋漁船は、3隻が廃・休業、1隻はイカ釣り漁船に転換した。残った漁船は、与那国島周辺などに漁場を変えることにした。
川畑氏は「沖縄の船も操業しない好漁場で、今まで、なんの気兼ねもなしに働いていた。だけど、中国の船が走り回っておちおち仕事ができなくなった」と憤る。