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作家の太宰治(1909~48年)がデビュー間もない20代の頃、芥川賞選考委員で作家の佐藤春夫(1892~1964年)に宛てた書簡3通が見つかったことが7日、分かった。うち1通は、長さ約4メートルの巻紙に毛筆でしたためられ、芥川賞受賞を懇願する内容。会見した実践女子大の河野龍也准教授(日本近代文学)は「駆け出し時代の太宰の精神状況や、芥川賞がどのように権威づけされていくかを知る上でも貴重な資料」と話している。
書簡は佐藤の親族宅に保管され、整理に当たった河野さんが今年3月に発見した。芥川賞を泣訴する手紙は昭和11年1月28日付で、「第二回の芥川賞は、私に下さいまするやう、伏して懇願申しあげます」「佐藤さん、私を忘れないで下さい。私を見殺しにしないで下さい」などと切迫した心情がつづられている。
太宰は、小説「逆行」で前年に創設された芥川賞の候補となったが落選。選考委員だった川端康成の選評に激高し、「刺す」「大悪党だと思つた」などとする文章を発表。一方、太宰の受賞を切望する手紙としては、「芥川賞をもらへば、私は人の情で泣くでせう」と佐藤に訴えたものが有名だが、今回の手紙は8日前の日付で約4倍の長さ。