日本の議論

国立大の「文系廃止」の誤解はなぜ広がったのか? 原因は「舌足らず」の通知文 文科省は火消しに躍起だが… 

 「ミッションの再定義」とは文科省と各国立大が平成24~25年度にかけ、共同で取り組んだ大学改革の論点整理のこと。その中で、教員養成系学部については、18歳人口の減少を背景に、教員免許取得を卒業条件としない、いわゆる「ゼロ免課程」の廃止が盛り込まれた。ただ、通知ではその前提部分を省略したため、あたかも人文社会系学部までが廃止対象に含まれるように解釈されたのだ。

英字紙も1面で発信

 文系廃止通知の衝撃波は広範囲に及んだ。まず反発したのは、国内の人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野の科学者で構成される日本学術会議(東京都港区)。7月23日に発表した声明で、「人文・社会科学の軽視は、大学教育全体を底の浅いものにしかねない」「(人文社会科学系の)研究者としての道を歩もうとする者の意欲をそぎ、ひいてはバランスのとれた学術の発展を阻害することになりかねない」などと批判した。

 影響は国内だけではない。8月4日付のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙アジア版は1面などを使って、日本政府が理系人材を欲しがる産業界の意向を受け、人文・社会科学系の教養教育を犠牲にして国立大学の見直しを進めている-などと報じた。

 文部科学大臣補佐官の鈴木寛氏も8月17日配信の経済誌オンライン版のコラムで今回のWSJの記事に言及した上で、「先日、米国の友人から、もう国際的な共同研究はできなくなるのか」と聞かれたことを記し、誤解の国際的な広がりに懸念を示した。

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