高齢者などに多く、食物を飲み込みにくい「嚥下(えんげ)障害」で、のどに微弱な電流をあて、脳に刺激を与えることで、食物を飲み込む反応を速める新たな治療法を、兵庫医科大学(西宮市)の越久仁敬教授が開発し、発表した。
越久教授によると、日本では年間約40万人が脳卒中になり、そのうち7割以上が嚥下障害を発症。嚥下障害により食物が誤って気管に入ることで起こる「誤嚥性肺炎」で死亡するケースも増えているという。
これまで、のどに7~25ミリアンペアの強い電流をあて、嚥下に使う筋力を強める治療法が一般的だったが、強い電流をあてることによって皮膚に痛みや不快感を生じた。今回は、3ミリアンペア以下の微弱な電流を流すことで脳を刺激し、「嚥下反射」を早める方法を開発した。
実験では、68~86歳の軽度の嚥下障害の患者12人に、微弱な電流を15分間あて、効果を測定。すると、食物がのどに達してから嚥下反射が起こるまでの時間が、平均1・37秒から1・17秒に短縮され、ほぼ正常の人と変わらない数値に改善された。
微弱な電流を流す機器は、医療機器の開発製造を手がける「ジェイクラフト」(大阪府和泉市)が開発し、28日から医療機関向けに発売する。当面は病院などで使用されるといい、同社の担当者は「効果を立証し、今後は家庭などでの使用が可能になれば」と話した。