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成功談頼みの教育論に一石 『「学力」の経済学』中室牧子著

『「学力」の経済学』中室牧子著(ディスカヴァー・トゥエンティワン・1600円+税)
『「学力」の経済学』中室牧子著(ディスカヴァー・トゥエンティワン・1600円+税)

 経済や財政政策を決める際は、その正当性を証明するデータが厳しく問われる。ところが教育政策となると、科学的な根拠を欠いた主観的な意見がいまだに影響力をもつ。気鋭の教育経済学者が豊富な実験データを示し、そんな日本の教育論議に一石を投じている。

 子供をご褒美で釣るのはダメ▽ほめて育てるのがよい-。こうした定説も、教育経済学の知見に照らすと疑問符がつく。目先の利益を優先する人間の性質に着目すれば、ご褒美は今勉強することの満足を高める効果がある。自尊心を育むとされる「ほめ育て」だが、自尊心が高まれば子供を社会的リスクから遠ざけられるという科学的根拠はほとんど示されていない…という具合に。〈私が信頼を寄せるのは、たった一人の個人の体験記ではありません。個人の体験を大量に観察することによって見出される規則性なのです〉。誠実さや忍耐強さ、社交性といった〈非認知能力〉の大切さを説く論旨も説得力がある。

 6月刊で、8刷9万部。「教育をめぐる漠然とした不安への回答がきちんと書かれ、共感を集めている」と担当編集者の井上慎平さん。主に20~40代の子育て世代が、驚き、そして膝をうちながら読んでいる。(ディスカヴァー・トゥエンティワン・1600円+税)

 海老沢類

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