経済インサイド

霞が関で起きた第2のドローン事件 「飛ばしたいのに飛ばせない…」経産省が子供向けイベントで大失態

【経済インサイド】霞が関で起きた第2のドローン事件 「飛ばしたいのに飛ばせない…」経産省が子供向けイベントで大失態
【経済インサイド】霞が関で起きた第2のドローン事件 「飛ばしたいのに飛ばせない…」経産省が子供向けイベントで大失態
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4月に首相官邸屋上で発見されたことを機に、何かとお騒がせな小型の無人飛行機「ドローン」による事件が再び東京・霞が関の官公庁で起こった。今度の舞台は経済産業省。夏休みに入った子どもたち向けに毎年開催している見学会「子どもデー」での出来事だ。その中で最大の目玉イベントとして用意されたのが、「屋外でのドローン飛行体験会」だったのだが…。

ピクリとも動かないドローン…

子供デー初日となった7月29日。快晴に恵まれたこの日、経産省の玄関脇に集まった10数人の子供たちの期待も気温とともに高まっていた。前日には経産省の記者クラブに「何かと注目されるドローンを飛ばします」と広報室からの呼びかけもあり、民放のテレビカメラ2台も駆けつけ、ドローンの飛行を待ちわびた。

そしてドローンを飛行させる予定の午前10時半を迎えた。担当者がコントローラーを手に取る。「いよいよ飛ぶぞ」。子供たちの純粋なまなざしとテレビカメラのレンズがドローンに集まる。

だが、ドローンはピクリとも動かない。地面から浮き上がるところか、作動する気配すら感じ取れない。ドローンが鎮座している状況を子供たちがただ眺めているというシュールな光景がしばらく続いた。

焦る担当者は迅速に決断した。「動かないので、イベントは中止です」。期待していた子供たちのガックリした表情は難なく想像できるであろう。目玉イベントとして取材に来ていたカメラマンの顔から冷や汗がしたたる。「ニュースで流す画がないぞ…」。

だが、流石は経産省。室内でも飛ばせる小型ドローンの飛行体験会も用意していたのだ。屋外では飛ばせなかったが、少しばかりグレードダウンした室内飛行体験会に子供たちを誘い、とりあえずは事なきを得た形でイベントを進行。集まった報道陣も「何とか画にはありつけた」と、一様に胸をなで下ろした。

霞が関周辺はすでに「飛行禁止区域」

ここで来場していた子供たちも抱いであろう大きな疑問がある。「なぜドローンは飛ばなかったのか」。ただ、その答えはすぐに判明することになる。

この日、経産省が用意したドローンは、4月に首相官邸屋上で発見された機種と同型のドローン大手「DJI」製のものだった。

実はDJI製のドローンは衛星利用測位システム(GPS)が使われており、飛行禁止区域に指定されている空港周辺などでは離陸できないようになっている。同社は首相官邸での事件を受け、首相官邸と皇居周辺を飛行禁止区域として新たに追加設定し、これらの半径1キロ以内では離陸できない仕様に変更していたのだ。このことで経産省のある霞が関周辺も飛行禁止区域に該当してしまったのである。

経産省はこのことに気付かずに飛ばそうとしていたわけだ。事前に試験飛行をしなかった経産省の失態とみるべきか、それともDJIのGPSシステムが正常に作動した技術力、対応力を褒めるべきか-。来場していた子供たちが楽しめたのであれば大した問題ではないのかもしれない。ただ、子供たちが「なぜ最初のドローンが飛ばなかったのか」と質問を投げかけてきたとすれば、経産省はしっかりとした説明責任を果たすべきであろう。

中国企業がドローン1万台を無料配布!?

経産省の出来事は、誰かが大きな被害を受けたわけでもなく、笑って許せる珍事のようなものだ。だが、今後は笑い飛ばすことのできない大事故につながりかねない驚くべきドローン計画が噂されている。

そのひとつが、中国の某ドローンメーカーが日本国内でドローン1万台を無料配布するという計画だ。ある政府関係者が伝えるところによると、1万台配布する計画の機種は1台1万円以下の格安のもののようだ。配布時期などの詳細は定かではないが、どうやら日本市場開拓のためのプロモーション企画の一環だという。

総務省によると、国内で使われている数万円台のドローンは6万台程度と推定されており、1万台というとその6分の1の規模になる。果たして中国の1企業だけで、それだけの規模のドローンを無料配布できるかは懐疑的ではあるが、前述のDJIはすでに日本国内で5万台を販売しているという推計もあり、あながち冗談ではないのかもしれない。

ドローン高速レースの開催も検討?

もうひとつが、年内にも国内で開催されるのではないかと噂される「ドローンの高速レース」だ。ネット上の動画サイトでは海外のレース模様がアップされている。のぞいてみると、その迫力とスピード感に驚かされる。

出場しているドローンは自作で組み立てたものと思われ、その飛行スピードはゆうに時速100キロを超える。ドローンに搭載されているカメラから送られる映像を見ながら操縦し、ゴールまでの順位を競うものだが、中には森林コースの木々の間を高速で駆け抜けていくようなレースもあり、さながらSF映画のワンシーンのようだ。

だが、驚異なのは自作で時速100キロを超えるドローンを容易に製造できるという実態だ。操縦技術があれば簡単に目的物にドローンを命中させることも可能で、「使い方によっては兵器にもなり得る」(政府関係者)。

国は飛行の規制に向け急ピッチで準備を進めているが、問題を未然に防ぐためには、前述のDJIのように飛行禁止区域の設定をメーカーに義務付けるような厳しい規制が必要なのかもしれない。(西村利也)

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