思ふことあり

スポーツジャーナリスト・増田明美 選手と観客のための施設

 建設の過程をうかがいながら、新国立競技場へのヒントがたくさんあると感じた。一番は利用者の意見をしっかりと反映していることだ。函館市教育委員会生涯学習部の池田敏春さんと函館視覚障害者福祉協議会理事長の島信一朗さんが案内してくださった。

 島さんは全盲でいらっしゃる。池田さんは「島さんのおかげですよ」と話す。メーンとサブのアリーナにそれぞれランニング用走路があり、サブの150メートルのコースには外側に手すりがついている。「高齢者やリハビリをする人にも使いやすいようにしました」と島さん。車椅子用の観戦スペースにはロビーから専用の出入り口が設けられ、車椅子のまま利用できるロッカーやシャワールームも完備されていた。

 通路の中心にはグレーのゴムが敷いてある。島さんは「黄色く硬い点字ブロックのほうが足の裏で感じやすいし、弱視の人も見やすい。でも車椅子やベビーカーの人の邪魔にならないようにゴム製にしました」と。細やかな心配りに感動した。池田さんによると、工事費が高騰する中で費用の圧縮を求められたらしい。しかし、床の材質、競技会場の広さ、防音性能の3点だけはこだわり続けた。

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