「抜本的見直し」という言葉さえ、もどかしさを感じる。
125万件に上る個人情報流出事件をめぐる日本年金機構のずさんな対応を見る限り、とても国民の年金を扱うに足る組織とは思えない。
機構は「再生本部」を立ち上げ態勢立て直しを急ぐとしている。だが、社会保険庁を廃止して設立された経緯を考えれば、自己再生を期待するのは難しい。国民の年金不信を食い止めるには、安倍晋三首相自らが先頭に立って改革に乗り出す必要がある。
一番に責められるべきはサイバー攻撃を仕掛けた犯人である。機構は被害者だが、最初の攻撃を受けた際に適切な対応さえしていれば、流出は防げたことは機構自身が認める通りだ。
しかも、それは極めて初歩的なミスだった。最初に標的型メールを疑った担当者の報告に対して幹部は動かず、職員が不審メールを受信していたことを把握しながら担当部署は確認を怠った。サイバー攻撃に対応する具体的なルールも定められていなかった。個人情報の重みに対する意識が欠如していると言わざるを得ない。