正論

戦後70年に思う 談話を未来のビジョンに繋げよ

 □京都大学大学院教授・中西寛

 安倍晋三首相は8月14日、「内閣総理大臣談話」を閣議決定して読み上げた。戦後70周年談話に関する首相の当初の意図が、村山談話に批判的な思想的立場に由来するものであったことは間違いないだろう。

 《政治外交的観点を優先》

 しかし首相の思想や個人的思いは、政治外交的考慮によって修正を繰り返した。一時期、閣議決定をしない個人談話とする観測も流れた談話は、最終的に公明党との調整も経た閣議決定となり、村山談話のキーワードとされる「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「心からのお詫(わ)び」を含めるに至った。

 その過程において国内各層の意見表明だけでなく、安保法制の審議停滞と国会会期の長期延長、アメリカとの調整、安倍首相の9月訪中や日韓首脳会談に向けた調整などさまざまな要素が複雑に作用したことが推測される。この発出に至る経緯を解きほぐすことは将来の政治外交史研究者にとっては興味深い研究対象となるだろう。関係者が記録を遺漏なく保存することを願いたいと思う。

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