「秀山祭九月大歌舞伎」 吉右衛門「初代の良い芝居、伝えたい」

「久しぶりに娘(信夫)と再会したのに、義理と忠義で殺さなくてはいけない苦しさと悲しさ。しかし、如実に悲惨さを出すのではなく、(公家らしい)みやびな中で見せるのが眼目と思います」と吉右衛門。

田舎で娘を養育してくれた小由(こよし)(中村東蔵)との再会を喜び合った後、有常は身替わりに討つことを決めた娘の髪を梳(す)く。その父親の苦衷を、信夫が弾く琴、小由の打つ砧(きぬた)の音が劇的に彩る。

「太棹(ふとざお)(三味線)とのかけ合いもあり、歌舞伎でなければできない、良い演出と思います。物語が次々と展開する素晴らしい作品なので、汚さず良いものにしたいですね」

吉右衛門は夜の部の「伽羅先代萩」では、お家横領をたくらむ悪の大役、仁木弾正(にっきだんじょう)を演じる。17世紀に起きた伊達騒動を題材に、今回は坂東玉三郎が女形の大役、政岡を演じるほか、中村歌六(かろく)が悪女の八汐と渡辺外記左衛門(げきざえもん)の2役を勤めるなど豪華な顔合わせでの上演となる。

「仁木は実父と、紀尾井町のおじさん(二代目尾上松緑(おのえしょうろく))に教えていただきました。ニン(役と持ち味の関係)で見せる役なので、難役の一つですね」

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