自公政権がかつて検討した人権擁護法案は、差別や虐待などからの救済を目的に新たな人権救済機関を作る内容だった。ただ、与党内からも人権侵害の定義が曖昧で、恣(し)意(い)的な運用や表現の自由の規制などへの懸念が噴出。民主党政権もメディア規制を排除した人権救済法案を国会に提出したが、廃案になった。
「定義が曖昧」「表現の自由の規制」は今回の法案にも共通するが、民主党は19日の協議で「法案がズタズタになっても受け入れる覚悟だ」と主張。同党の有田芳生氏は協議後、法案修正について「全くこだわらず検討したい」と語った。
なりふり構わず、とにかく「ヘイトスピーチは法律違反」としたい民主党に対し、公明党も法規制には前向きで、石井啓一政調会長は19日の記者会見で「ヘイトスピーチは許されないと法律に位置付けることは重要だ」と強調した。法成立の可否を握る与党間の調整がカギとなる。
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ヘイトスピーチ
特定の国籍や人種、民族などに差別意識や偏見を持ち、排斥や憎しみをあおるような言動。憎悪表現とも翻訳される。海外では法律で規制している国もあるが、日本では直接的な法規制はない。国連の人種差別撤廃委員会は昨年8月、日本に改善を勧告。最高裁は同年12月、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の朝鮮学校に対するヘイトスピーチを差別と認定し、損害賠償を認めた。