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世界に誇る日本の高速鉄道「新幹線」。日本の大動脈、東海道新幹線の開業から半世紀が過ぎたが、運行上の問題で車内の乗客が犠牲になった死亡事故はこれまでに1件も起きていない。ピーク時でほぼ3分間隔の過密ダイヤ、最高時速285キロの高速運転を支えているのは、日本の得意技ともいえる緻密なものづくりの世界。海外での高速鉄道受注を競う鉄道会社や鉄道車両メーカーを陰で支える部品会社の存在にスポットライトを当てる。
緩まない上、何十回も着脱できる
東海道新幹線の看板列車「のぞみ」に投入される最新型車両「N700A」。連日、多くの乗客が利用するこの車両には、ある特殊なねじが使われている。車体下部にある車輪を覆うカバーをはじめ、車体の至るところに使われ、その数は1編成(16両)当たり約2万本に上る。
そのねじとは絶対に緩まないナットと呼ばれる「ハードロックナット」。特殊ねじメーカーのハードロック工業(大阪府東大阪市)が開発した。
絶対に緩まないナットとは、どのようなものか。若林克彦社長は「簡単に言えば、ナットとボルトとの間に楔(くさび)を打ち込んだもの」と説明する。ナットを凸形の下ナットと凹形の上ナットの2層に分解。下ナットの凸部分を少しずらして偏芯を施す。そこに凹形状の上ナットを締め込む。するとハンマーで下ナットに楔を打ち込むのと同じ効果が表れる。しかも一度ナットを締めると、絶対に緩まない。そして着脱は何十回でもできる。