広島土砂災害から1年、及川享・市危機管理担当局長に聞く

 75人もの犠牲者が出た昨年8月20日の広島市の土砂災害からもうすぐ1年。その後、市の危機管理体制や市民への災害情報伝達、避難勧告などはどう変わったのか。4月に新設された危機管理室の及川享担当局長に聞いた。(浜田英一郎)

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 --災害での課題を

 「昨年の土砂災害は真夜中の急激な気象変化で、短時間にものすごい雨が降って起きた。市は検証部会を設置して課題と対応について提言をいただき、主に3つの課題が浮かび上がった。1つ目は現地で災害対応にあたる区役所職員の参集。市消防局は24時間体制だったが、真夜中に時間雨量100ミリ、3時間で200ミリを超す猛烈な雨が降った中、災害警戒本部が設置されても区役所職員は迅速に集まれなかった」

 --ほかの課題は

 「2つ目は市民への災害情報の伝達。災害前日の夜から、市消防局が複数回、自主避難をうながす防災情報を流していた。しかし、どれも同じ内容で切迫感が住民に伝わらなかった。道路が川のような状態になり、区は市民を逆に危険にさらすことになるのではと躊躇(ちゅうちょ)し、避難勧告を出せなかった。3つ目は気象情報の把握。市内52カ所の雨量計データを1時間ごとに市消防局が集計していたが、1時間に100ミリという大雨で対応が困難だった」

 --いまの市の対応は

 「以前は大雨注意報発令では区役所職員を参集していなかったが、注意報の段階から参集することにした。大雨警報が出れば、副区長が出て職員も増員して、いつでも避難勧告を出せる体制となった。情報伝達では、大雨警報が出た段階でまず防災行政無線などで注意喚起をし、その後は内容を変えて避難準備情報を流す。避難に時間がかかると思われる高齢者や障害者には、早めの避難を呼びかける」

 --続いての対応は

 「避難基準雨量に達したり土砂災害警戒情報が出たりすると、避難勧告を出す。その際、避難所への移動が困難であれば、付近の頑丈な建物や自宅2階など安全性が高い場所への移動も呼びかける。大雨特別警報などが出れば避難指示に移る。いまの避難情報提供は、注意喚起、避難準備情報、避難勧告、避難指示の4段階。避難勧告と避難所開設がセットだったのも見直し、災害準備情報段階で公設避難所を各学区に1カ所開設している」

 --気象情報の把握は

 「災害発生時は、雨量や土壌に染みこんだ雨量を1時間単位で計測していたが、現在は30分単位の計測とし、5キロ四方ごとの土砂災害の危険を示す情報収集も併せて行っている。平成28度末までに、10分ごとに雨量や土壌雨量を自動集計できるコンピューターシステムも完成することになっている」

 --被災地では

 「これまで話したのは、市全体での見直し。復旧・復興途上の被災地には大雨注意報で避難準備情報、大雨警報で避難勧告と、2段階早く情報を出している。また被災地では自主防災会を中心に地域ごとの防災マップ作成にあたっている。例えば一時待避所として近所でも避難できる建物を表示したり、災害発生前の土や草のにおいといった前兆現象を盛り込んだりしている。こうした取り組みは非常によいことだと思う。全市に広がるよう市も支援したい」