複眼ジャーナル@NYC

後退するマグナ・カルタ精神

 米投資会社カーライル・グループの創業者、デイビット・ルービンスタイン氏がニューヨークに立ち寄った。ルービンスタイン氏は篤志家としても名が通っており、とある自慢の「社会貢献活動」が存在する。

 13世紀に英国王の権限制限と諸侯の権利を記した「マグナ・カルタ(大憲章)」を米国立公文書館に貸与している。英国では市民社会が形成される過程で、大憲章は権力の専横から国民の自由・権利を守る「法の支配」の根拠となった。

 ルービンスタイン氏は、大憲章の写本が競売にかけられていたのを発見し、2130万ドル(26億4千万円)で落札した。以来、「米国の誇る人権と自由を再確認してもらう」(ルービンスタイン氏)ために、一般国民が観覧できるようにした。

 「大憲章は米国が英国から独立した、よりどころの一つ」(米シンクタンク、ケイトー研究所のロジャー・パイロン氏)。大憲章は世界中の立憲主義の下地となったが、その価値観は「経済的自由の保障」と「独立の精神」に支えられている。

 ボストン茶会事件で知られるように、18世紀に起きた米独立戦争の発端は経済的自由の獲得である。大憲章も、徴税権を乱用する国王に貴族が立ち上がったのが生い立ちだ。

 大憲章が制定された1215年から数えて、今年は800周年にあたる。それを記念してマンハッタンでは弁護士らの知識人が会合を持った。参加者は、米国で潮流となっている増税路線に対する懸念を開陳していた。

会員限定記事会員サービス詳細