主張

日朝外相会談 政府の「本気」が問われる

 岸田文雄外相は、クアラルンプールで北朝鮮の李洙●(リ・スヨン)外相と会談し、拉致被害者らの再調査の早期報告を求めるとともに「一日も早い全ての被害者の帰国」を要請した。李氏は、再調査を誠実に履行していると反論し、明確な回答はなかったとされる。

 北朝鮮が要請だけで動く国でないことは、過去の交渉からも明らかだ。政府は「行動対行動」の原則にのっとり、解除した独自制裁の復活や、新たな制裁を突きつけるべきだ。拉致被害者、横田めぐみさんの母、早紀江さんはかねて「日本の本気度が試されている」と述べてきた。政府の「本気」をみせてほしい。

 北朝鮮は昨年7月4日、拉致被害者らを再調査する特別調査委員会を設置し1年をめどに結果を報告すると約束した。これを受けて政府は、独自制裁の一部を解除した。だが先月になって北朝鮮は、「今しばらく時間がかかる」と報告の延期を連絡してきた。

 報告を心待ちにしてきた被害者家族にとって、これほど残酷な仕打ちはない。李氏の「再調査を誠実に履行している」という反論は、あまりに空々しい。

 なぜいつまでも、国家ぐるみの誘拐犯に振り回され続けなくてはならないのか。被害者家族の怒りは沸点に近く、その矛先は日本政府にも向くことになる。

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