鑑賞眼

新橋演舞場「もとの黙阿弥」 滑稽さと悲哀…文明開化の狂騒

「もとの黙阿弥」の一場面(松竹提供)
「もとの黙阿弥」の一場面(松竹提供)

劇作家、井上ひさしが昭和58年、新橋演舞場で商業演劇に初挑戦した舞台の再演。シンプルに井上作品と向き合える、こまつ座の舞台が一番だしの味わいなら、こうして歌舞伎や新派などからスターが結集し、豪華な道具で彩られた舞台は、うまみに鯛(たい)もエビも加わった高級和食の楽しさがある。栗山民也演出。

明治の文明開化の最盛期、浅草の食い詰め芝居小屋・大和座を舞台にしたとりかえばや物語。台所事情の苦しい男爵家の跡取り、河辺隆次(たかつぐ)(片岡愛之助)と成金政商の娘、お琴(貫地谷しほり)に鹿鳴館での見合い話がわく。2人は仕方なく、大和座座頭の坂東飛鶴(ひかく)(波乃久里子)に西洋舞踊を習うが、河辺は書生(早乙女太一)と、お琴は女中(真飛聖)と、それぞれ主従が入れ替わり、抱腹絶倒の身代わり見合い話が進行する。

明治維新後、価値観の転換期にあった日本。新と旧、和と洋、特権階級と庶民…。何が入れ替わってもおかしくない浮足だった文明開化の狂騒が小さな小屋で繰り広げられる。

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