浪速風

「二の丑」だから鰻が食べたい

うなぎの老舗「菱東」のうなぎ丼セミダブル=大阪市福島区
うなぎの老舗「菱東」のうなぎ丼セミダブル=大阪市福島区

たいこ持ちの一八が通りすがりの男に「旦那、しばらくで」と声をかける。見ず知らずだが、男は一八を覚えていると言い「鰻でも食おう」。かば焼きで一杯やり、鰻重を平らげると、男は席を立って戻ってこない。店の者が「自分はお供だから勘定は旦那に、と」「えらい高いな」「へえ、お土産を6人前」

▶昼飯をおごってもらうつもりが、反対にだまされる「鰻の幇間」という落語である。演目にしていた古今亭志ん朝さんは生前、鰻を食べなかった。嫌いだったのではない。二つ目時代に身の回りに不運が続いたため、虚空蔵菩薩にお参りし、菩薩の使いという大好物の鰻断ちをしたのだ。

▶テレビ番組で「最後の晩餐には何を?」と尋ねられ、「死ぬほど鰻を食べてみたい」と語ったという。今日は土用の丑の日。今年は二度ある「二の丑」である。高いので我慢してきたが、思い切って鰻を食べるとしよう。志ん朝さんのように心残りのまま死にたくないから。