矛盾した判断に疑念を持たざるを得ない。
厚木基地(神奈川県)の騒音被害をめぐる控訴審判決で、東京高裁が1審の横浜地裁判決と同様、海上自衛隊機の夜間早朝の飛行差し止めを命じたことだ。
騒音の主体は米空母艦載機なのに、なぜ海自機の飛行が差し止められるのか。自衛隊の活動が損なわれかねない。日本や国民の安全を著しく軽視するものではないか。
政府は、騒音被害を受ける住民の救済を改めて促されたことを重く受け止め、対策を強化すべきだが、抑止力に重大な支障がでないよう努めるべきだ。
判決は、米軍機の飛行差し止め請求については国の権限が及ばないとして、1審同様に退けた。
厚木基地は、海自にとって最重要の航空拠点だ。航空集団司令部と第4航空群が置かれ、対潜哨戒機P3C、救難飛行艇US2などを配備している。
これら海自機が、地の利を生かして太平洋から東シナ海まで広範な海の上を飛び、海上交通路(シーレーン)を脅かす外国の潜水艦や艦船、工作船の警戒監視に当たっている。海難救助や離島の急患搬送を担っていることも忘れてはならない。
海自は厚木基地での夜間・早朝飛行を原則自粛してきた。周辺住民に配慮しているためだが、有事が起きるのは昼夜を問わない。