主張

TPP合意見送り 機運失わず協議再開急げ

 妥結への最後の機会とみられた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉は、知的財産などで対立が解けず、またも大筋合意を見送った。極めて残念である。

 甘利明TPP担当相は閣僚会合後、次回の会合で「すべて決着すると思う」と述べた。だが、日程をまだ決めておらず、楽観はできまい。

 このままでは、参加12カ国の妥結機運が低下しかねないことを強く懸念する。それを避け、合意形成を促すのは、群を抜く経済力を持つ米国と日本の責務である。

 今回の交渉では、重要農産品をめぐる日米両国の関税協議を含めて、多くの交渉分野で妥結に向けた前進がみられたようだ。

 だが、新薬データの保護期間では、米国とオーストラリアなどが鋭く対立した。乳製品の市場開放では、ニュージーランドの強硬姿勢が際立った。

 いずれも、各国内での政治圧力が極めて強い分野だが、少しでも歩み寄れるよう、粘り強く協議を継続しなければならない。

 気がかりなのは、各国の政治日程だ。そもそも、この機会を逃せば交渉漂流の恐れがあるといわれたのは、来年の大統領選に向けた米国の都合で、交渉進展が難しくなるとみられたからだ。カナダも今年10月に総選挙がある。

 甘利氏によると、各国には8月末までに次回会合を持った方がいいとの共通認識があるという。日増しに政治決着が難しくなる可能性があるだけに、早急に閣僚会合の再開を決めるべきだ。

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