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農家民宿 地域活性化へ取り組み広がる 長野

 都会の中学生や高校生らが農家に宿泊しながら農業体験や農家の人たちとの交流を行う「農家民宿」の取り組みが、県内で広がっている。今年は新たに安曇野市が35軒の「農家民宿」で受け入れを始めた。背景には子供たちに好評であることに加え、少子高齢化や人口減少で農山村存続の危機が叫ばれる中、都市との交流が地域活性化につながればという自治体の期待がある。(三宅真太郎)

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 「農家民宿」の実施を受け入れた安曇野市の農家、安田修司さん(61)の家には24日、東京都江戸川区松江第四中学校2年生の生徒4人が訪れた。

 生徒たちは安田さんの家族に自己紹介をすると、真っ白な軍手をはめてクワやハサミを手にして、安田さんの妻の洋子さん(61)の案内で家の裏の畑に向かった。ジャガイモやトマト、キュウリ、カボチャ、ズッキーニなどを自らの手で次々と収穫、夕飯の食材を調達した。収穫が終わると近くの林へ虫捕りに。しばらくすると「見つけたよー」と満面の笑みでクワガタを持って戻ってきた。

 「初めてのことばかりで本当に楽しかった。絶対また来たい」と生徒の星海渡君(13)。その表情を見て、洋子さんも「子供たちが喜んでくれるか不安でしたが、楽しそうな様子を見るとやりがいがありますね」と目を細めた。

 ◆都会にない体験

 農家民宿の体験内容は、受け入れ先の農家がそれぞれ考案。野菜の収穫や畑の草取りなどの作業、星空の観察など、都会ではできないことを体験してもらう。

 安曇野地域では平成24年度に松川村が「農家民宿」を始め、翌年から大町市も加わった。初年度の受け入れ人数は1校39人だけだったが、都会の子供たちにとって通常の地方への学習旅行と違って直接、田舎暮らしを体験できる「農家民宿」の人気は高まり、近年需要が拡大。27年度からは安曇野市も参加した。今年度は同地域の2市1村で、「農家民宿」を行う農家は101軒にまで広がり、県外の15校から2281人が体験学習をする予定だ。

 安曇野市の担当者は「県外の学校からの問い合わせは依然多い。協力農家はこれからも増やしていきたい」と意気込む。

 ◆学校では反響も

 県内では、最初に飯田市が平成10年から「農家民宿」を開始。その後、飯田、下伊那地域の南信州全域に動きが広がり、平成26年度は50校から約6200人が参加、これまでに延べ10万人以上を受け入れた。現在では安曇野地域のほか、長野市や青木村など実施する自治体は県内全体に広がっている。

 自治体にとっては子供たちに地域の魅力を体感してもらい、家族の旅行の増加、さらには移住といった地域活性化につながればとの期待がある。一方、「農家民宿」を行った学校では、それをきっかけに文化祭で農産物を販売するブースを設置したり、生徒の家族が旅行で再び訪れたりといった反響も少なくない。

 「農家民宿」の拡大に取り組む信州・長野県観光協会の吉池輝樹事務局長は「農家の生活を体験しながら、昔からの知恵や慣習を学ぶことは子供にとって貴重な経験」と意義を強調。「観光や定住など相乗効果を得られるように取り組んでいきたい」と話している。

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【用語解説】農家民宿

 農水省によると、地域がレジャーを受け入れるための態勢整備を促す「農山漁村余暇法」が平成6年に制定され、グリーン・ツーリズム(農山漁村における滞在型の余暇活動)が脚光を浴びるようになり、その一つとして「農家民宿」という形態が広がった。全国の農家民宿は2006軒(平成22年)で、一般観光客向けも人気だが、地方への学習旅行で取り入れる学校が増えている。