名物料理、北京ダックにはいろいろな楽しみ方がある。専門店に行けば、「アヒルの三つの食べ方」という意味の「鴨三吃」というコース料理を注文できる。一匹のアヒルを分解して、その皮、肉、骨をそれぞれ三つの調理法で料理にしてくれる。
第一の食べ方は北京ダックの定番、焼き上がった皮を削ぎ切りにし、小麦粉を焼いてつくった「薄餅」(バオビン)で包んで食べる。第二の食べ方は肉の部分をモヤシなどと炒めて肉料理にする。第3の食べ方は、骨のガラを使って白濁したスープをつくる。アヒルのすべての部位を無駄なく使い、同じアヒルから三つの違う味わいを引出すのがこのコース料理の売りだ。
先日、数人の中国の改革派知識人と北京市内のレストランで「鴨三吃」を注文した。杯を重ねているうちに、日中関係の話となった。執拗に日本批判を繰り返す習近平政権の本音はどこにあるかについて、いろいろな意見が出たが、「権力基盤が弱く、国内をまとめられないから、日本を叩くことに通じて政権の求心力を高めようとしている」という結論で一致した。
ある知識人は「最近百年、日本は実に中国共産党に都合よく利用されてきた。まるでこのテーブルにあるアヒルのように、鴨三吃にされている」と指摘した。アルコール度数の強い白酒一杯を飲み干してからこの知識人は、共産党がいかに日本を「三吃」してきたのかを説明しはじめた。