浪速風

遠い夏の日の麦わら帽子

麦わら帽子の出荷に追われる帽子メーカー=埼玉県春日部市(寺河内美奈撮影)
麦わら帽子の出荷に追われる帽子メーカー=埼玉県春日部市(寺河内美奈撮影)

「海を知らぬ少女の前に麦藁(わら)帽のわれは両手をひろげていたり」(寺山修司)。情景を想像するに、旅先の山峡で出会った少女に海の大きさを説明しようと両手をいっぱいに広げて見せる-。小欄にはそんなロマンチックな思い出はないが、麦わら帽子は遠い夏の記憶を呼び起こす。

▶子供の頃、虫捕りなど外で遊ぶのに麦わら帽子は欠かせなかった。忘れて出ようとすると「日射病になるよ」と母が追いかけてきた。子供だけでなく、夏に帽子をかぶる大人も多かった。作家の開高健さんはアマゾンの中流の町で手に入れたサトウキビの殻を編んだチロリアンハット風を愛用していたという。

▶世界を旅した開高さんは国境を越える度に帽子を購入した。あとで写真を整理するのに、帽子を見ればどこかがすぐにわかる。寺山作品をもう一首。「わが夏をあこがれのみが駈(か)け去れり 麦藁帽子被(かぶ)りて眠る」。夏の帽子には紫外線対策の実用もある。今日は二十四節気の「大暑」。