東芝不正会計-歪みの代償(下)

「社長、私はこの取引に反対です」不正の連鎖忠言も届かず

 会計制度に抵触する不適切な取引の排除は企業として当然だ。しかし一概に高い目標設定をやめ、容易な目標ばかりになれば、社員のモラール(職務遂行上の意欲)が衰え、大きな成長が望めなくなる副作用もある。

 かつて東芝にはもうひとつの「チャレンジ」があった。昭和40年に東芝の社長に就任し、名経営者と評価された土光敏夫氏が実践した「チャレンジ・レスポンス経営」だ。各事業部は目標にチャレンジし、達成できなかった場合は社長に理由を説明(レスポンス)する手法で、土光氏は議論を通じ、幹部との信頼関係を深めたという。

 高い目標の達成に向け、健全な営業努力を重ねることは、どの企業でも実践する当たり前のことだ。しかし、東芝は本来健全だった利益追求のあり方をゆがめ、将来の成長の機会を失おうとしている。これから支払う代償は、あまりにも大きい。(黄金崎元、高橋寛次が担当しました)

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